包丁の手入れ・研ぎ方

錆(汚れ)落とし

新しい鋼の包丁は、赤色錆が発生し易いものです。 (『錆(サビ)について』の項参照 )
赤色錆が発生すると、その錆を落とす為、砥石で包丁の腹部をこする方がいらっしゃいますが、 赤色錆の下に出来始めている酸化皮膜も一緒に落とす事になります。 赤色錆の出る度に砥石でこすったのでは、いつまで経っても酸化皮膜が出来ません。 つまり赤色錆の発生が止まりにくい状態が続きます。


赤色錆が発生したら右図のように、まな板などに刀身がピッタリ付くように包丁を押さえ、クレンザー(ミガキ粉)をナイロンタワシに付けて、包丁の腹部をこすって赤錆を落として下さい。この時、赤色錆の下にある薄いネズミ色の斑点が残る場合があります。その斑点はそのままにして置いて構いません。赤色錆のまま放置しますと、包丁の内部への酸化が進みますので注意して下さい。

包丁が新しい内は一日に一度位これを繰り返して下さい。次第に赤色錆が出にくくなります。プロの料理人のように使用の度に乾いた布で包丁を拭いて頂けば、赤色錆が発生する事はなく自然に酸化皮膜が出来ます。
また、酸化皮膜が出来ても週に一度位、衛生面からクレンザーでのお手入れをお薦めします。
鍋などは使用後必ず洗います。包丁も時々念入りに汚れ落としを行って下さい。
和包丁の場合も同様ですが、裏側では材質が違う為、酸化皮膜の出来具合が違います。割り込み包丁も、表面がステンレスだからと手入れを怠ると、刃先端の鋼部分に赤色錆が発生し、切れ味の低下につながりますのでご注意下さい。

【 注意事項 】

  • 間違って刃先をミガキクレンザーでこすると、切れ味が一度に落ちますのでご注意下さい。
  • クレンザーでこすった後は、水洗いして乾いた布で拭く事を忘れないで下さい。
  • 刃先部の錆びは、砥石で刃を研ぎ直す際に研いで錆を落とします。

包丁の研ぎ(砥石について)

包丁を研ぐ道具として、簡易砥石、スチール棒(ヤスリ棒)、砥石などがありますが、それぞれの特性がありますので注意してご使用下さい。
簡易砥石は、切れ味が少し悪くなった場合に補助的に使用します。この砥石は、研ぐ能力が少ない為、刃こぼれ等を直す場合には使用出来ません。
また、刃先の線に対して平行に砥石が当たる形式のものは、野菜等は切れますが、刺身などをきれいに切る刃は付きません。
一般の簡易砥石は、刃先先端部が研げるだけなので、定期的に、砥石を使用する事をお薦めします。
スチール棒は、不慣れな方が使用すると、刃先の線を部分的に凹ましてしまいます。凹んだ部分はまな板に当たらない為、たくあんなどを切ると、つながって切れるといった結果になりますので注意して下さい。特に、ハガネ製の包丁へのスチール棒の使用はお薦め出来ません。
砥石は、色々な粗さの砥石を使用する事によって、様々な状態の包丁を良く切れる包丁へ研ぎ上げる事が出来ます。
是非、使い方、研ぎ方を覚えて下さい。

使用する砥石について

砥石は、中に入っている砥粒の大きさにより下記のように分けられます。

種類 粒度
荒目砥石(荒砥) 100番~600番
中目砥石(中砥) 800番~1000番
仕上げ砥石 1500番~3000番

※粒度とは、砥石を構成している砥粒の大きさのことで、その砥粒の大きさは、1インチ(25.4mm)をその番手で割った値です。1000番の砥石は、25.4mm ÷ 1000 番 = 0.025mmの大きさの砥粒を使用したものです。

粒度の数値が小さい番手の砥石ほど、研ぐ能力が大きくなりますが、研いだ面は荒くなります。
また、砥粒の種類にGC砥粒が入った砥石は、普通のWA砥粒の砥石より砥粒自体の硬さが硬い為、研ぐ能力は大きく、研ぎづらいステンレス包丁の荒研ぎには重宝します。但し値段が少し高めです。
また、砥石をお買い上げの際は、なるべく砥石幅の広い大きな砥石を買われる事をお薦めします。かなり、研ぎ易さが違います。

  • 荒目砥石は、刃が欠けた場合など沢山研がなくてはいけない時や研ぎづらいステンレス包丁を荒研ぎする時に便利ですが、研ぎ面は荒く刃返りが大きいので、このままの刃付けでは、良く切れる刃にはなりません。
  • 中目砥石は、荒目砥石で研いだ面をきれいにし、刃返りを小さくします。
  • 仕上げ砥石は、更に研ぎ面をきれいにし、良く切れる刃が付きます。また、錆にくくなります。


砥石は永い間使用しますと、中ほどがへこんで研ぎづらくなります。
その場合は、砥石どうしをこすり合わせたり(専用の面直し用砥石もあります)、平らなコンクリートなどでこすって砥石面を平らな状態に修正して下さい。

両刃包丁(洋包丁)の研ぎ方

準備


たっぷりの水の中に砥石を、5分間位浸し泡が出なくなるのを待ちます。
砥石を水の中から引き上げ、濡れ雑巾の上に置くなどして、安定性を持たせます。(ゴム台が付いた砥石もあります)

右利き用の研ぎ方

刃先を手前にして右手で包丁の柄を握り、左手で刃先を押さえます。この時、右手の親指を包丁のハラに乗せてしっかり握ると、研ぐ際に一定の角度が保ち易くなります。
また、包丁を斜めにして研ぎますと、砥石面を大きく使え、早く研ぎ上げる事が出来ます。 但し、研ぐ方向に対して包丁の刃先の線が水平になりますと、良い刃は付きません。


研ぎ角度は、使用目的によって異なりますが、軟らかい物だけを切る場合には10°前後、多少硬い物を切る事がある場合には、12~15°をお薦めします。一般に、家庭用包丁の場合、購入時に刃付けされている幅が砥石にピタリと当たる角度(刃先から2mm位を砥石でこする角度)で研げば良いと思います。


次に研ぎに入ります。
一定の角度を保ち、手前から向こう側に研ぎます。
そして、向こう側から手前に戻す時は、初心者の方は、砥石から完全に浮かせて戻す事をお薦めします。

研ぎ角度がバラバラで手前に戻すと、刃先をつぶしてしまい、いつまで研いでも刃が付きません。何度か研ぎますと刃先に刃返りが付きます。左手で押さえている面のミネの方から刃先に向けて指でそっと撫でてみて、刃先にザラツキがあれば、OK!です。 このザラツキが刃先全体に付くまで、研ぐ箇所を変えて研ぎ上げます。
途中、砥石の水分が無くなりましたら、砥石に水をかけて下さい。尚、水道水をかけながら研いでも結構ですが、砥石の色に染まった水が透明にならない程度の水量(ぽたぽた程度)で行って下さい。
砥石の色に染まった水の中には、砥石の成分が多く含まれていますので、洗い流してしまっては、もったいありません。但し、黒色に染まった時は、一度きれいに洗い流して下さい。


次は、包丁を裏返して(刃先を向うにして)反対の面を研ぎます。
今度は、砥石の向う側から手前に研ぎます。 包丁のあごが砥石の右端にくるように置き、手前に研ぎ終えた時、切先(包丁の一番先端部)が砥石の上にくるように研ぎ、刃返りを取り去ります。
数回この作業を繰り返しますが、先ほどと同様に包丁を戻す時は、完全に砥石から浮かせる事をお薦めします。 またこの時、左手の押さえる力を弱くすると、刃返りが取り易くなります。
これで、今使用の砥石での作業は終わりです。

順次、大きな番手の砥石に変えて、同様に表裏面を研ぎ上げます。(④、⑤を繰り返す。)
最終の砥石の番手が大きいほど(砥石の粗さが細かいほど)、良く切れる刃付けが出来ます。


最後に刃返りをしっかり取り除きます。
取り方としては、軟らかい木などに包丁を軽く擦り付けたり、湿らした新聞紙を数回切ったりします。最終使用の砥石の番手が3000番で仕上げた場合は、刃返りの大きさがとても小さい為、布で軽くこすれば取れてしまいます。

*左利き用の研ぎ方…右利き用の研ぎ方を参考にして左右を逆に考えて下さい。

片刃包丁(和包丁)の研ぎ方

和包丁、骨スキなど片刃の研ぎ方は、表側の切刃全体(刃先先端からしのぎまで)が砥面に当たるように、裏側に刃返りが出来るまで研いで下さい。刃返りが出たら順次番手の大きな砥石に変えて表側を研ぎます。
裏側は出来るだけ研がない方が良い状態で包丁を使用出来ますので、最終の砥石だけ裏側を研ぐ事をお薦めします。裏側は、刃返りを起こすくらいの軽い気持ちで、砥石にピタリと包丁を当て研いで下さい。
尚、最終に使用の大きな番手の砥石で表面を研ぐ時、若干鈍角に研ぐと、刃持ちを良く出来ますが、研ぎすぎますと、切れ味が悪くなります。
文字で書くと包丁の研ぎは難しいと思われがちですが、とにかく何度も繰り返し行っている間に慣れて上手になるものです。

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